オルソケラトロジーレンズ 原理と仕組み
本日はオルソケラトロジーレンズ(以下、オルソK)の原理と仕組みについてお話致します。
オルソKは、通常のハードコンタクトとは違い、レンズ中央部分が周辺部よりもフラット(扁平)にデザインされています。
眼の表面を角膜といいますが、角膜は約550um程度の厚みがあり、その最表面を角膜上皮細胞(約50um)が覆っています。この角膜上皮細胞の形状を変化させることを目的としてオルソKはデザインされ、様々なメーカーから発売されています。
具体例としてメニコン社のオルソKを解説していきます。
レンズ中央からベースカーブ(以下B.C.)、リバースカーブ(R.C)、アライメントカーブ(A.C.)、ペリフェラルカーブ(P.C.) の4つのカーブで構成されています。
睡眠中に装着する事で、角膜中央ではフラットなベースカーブにより角膜上皮の厚みが薄くなり、それを取り囲むリバースカーブ部分へと角膜上皮細胞が移動します。これにより周辺部の角膜上皮が厚くなります。この角膜上皮の厚みの変化によって屈折率が変化し、近視矯正効果が生まれます。
各カーブの役割を下記に記します。
装用後には必ずレンズのフィッティングのチェックを行い、レンズ周辺のA.C.が浮いていないか、中央のB.C.がきちんと接触しているかを確認します。
通常のコンタクトレンズではあまり行わない、フィッティングの具合に対応したレンズデザインのカスタムも可能で、患者様の眼の形状により合ったオーダーレンズを処方することが出来ます。
処方後は、長期間(一ヶ月以上)使って頂く事で角膜中央の表面がより平坦化し、安定した視力が出るようになっていきます。
注意しなければならないことは、角膜の形状変化は上皮層のみによるため形状変化には限界があり、原則としては −1.0D ~ −4.0Dの近視の方が良い適応となってきます。
そして角膜上皮は細胞の新陳代謝(ターンオーバー)により、元の形に復元しようとしていきますので、装用を中止するとおおよそ1週間~1ヶ月程度で完全に元に戻っていきます(1,2。
1. Soni PS, Nguyen TT & Bonanno JA:Overnight orthkeratology:Refracitve and corneal recovery after discontinuation of reversegeometry lenses. Eye &Contact Lens 30(4):254-262,2004
2. Hiraoka T, Okamoto C, Ishii Y, et al : Recovery of corneal irregular astigmatism, ocular higher-order aberrations, and contrast sensitivity after discontinuation of overnight orthokeratology. BrJ ophthalmol,93:203-208,2009
昨今ではオルソKによる近視進行予防効果が多くの研究により示されており、10年を超える有効性と安全性の報告がされて来ています(3,4。
3. Hiraoka T : Myopia Control With Orthokeratology: A Review. Eye Contact Lens. 48:100-104. 2022
4. Lipson JM et al : The Role of Orthokeratology in Myopia Control: A Review
2017年より20歳未満にも適応が拡大され、昨今のオルソケラトロジーレンズの認知の高まりに伴い、簡単ではございますが、原理と仕組みについて触れさせていただきました。
宜しければ、下記ブログ記事もご覧ください。
参考:日本眼科学会:オルソケラトロジーガイドライン(第2版)
(*全てのスライド、画像はメニコン社様、アルファコーポレーション様のご厚意による)
<文責:三好政輝>